「中学生になってから、いつも眠そう」「夜はなかなか寝ないのに、朝は起きられない」「思春期は成長ホルモンが増えるから眠くなるの?」
思春期を迎えたお子様の睡眠習慣が変化し、以前より眠そうにしていることを心配する保護者の方もいるでしょう。
実は、思春期の眠気には、勉強や部活動による疲れだけでなく、体内時計が夜型にずれやすくなるという、身体の発達に伴う変化も関係しています。
最初に結論|思春期はなぜ眠い?
思春期は体内時計の夜型化と睡眠不足が重なり、日中に眠くなりやすい時期です。
思春期には眠くなる時刻が遅れやすくなる一方、学校がある日は早起きが必要です。その結果、睡眠時間が不足し、授業中や帰宅後に強い眠気を感じることがあります。
ただし、「成長ホルモンが増えたから眠い」とは判断できません。 十分に眠っても強い眠気が続く場合は、睡眠障害などの確認が必要です。
また、中学生・高校生に推奨される睡眠時間は、一般的に1日8〜10時間です。睡眠時間が足りているか、毎日の生活を振り返ることが重要です。
この記事では、思春期に眠くなる理由、成長ホルモンとの関係、必要な睡眠時間、朝起きられない場合の対策、医療機関への相談目安を解説します。
気になる項目から確認する
思春期の子どもが日中に眠くなる背景には、主に次のような要因があります。
1.体内時計が夜型にずれやすくなる
思春期には眠くなる時刻が遅くなりやすく、朝早く起きることが難しくなる傾向があります。
2.必要な睡眠時間を確保しにくい
学校・塾・部活動などで就寝が遅くなっても、登校のために早起きする必要があります。
3.疲労やストレスが重なる
学習負担、運動、対人関係の悩みなどが睡眠の量や質に影響する場合があります。
眠気には、身体の睡眠・覚醒リズムを調節する体内時計が関係しています。
その仕組みに関わるホルモンの一つが、メラトニンです。
メラトニンは、夜間に分泌が高まり、身体に夜であることを知らせる働きをしています。
思春期には、このメラトニンの分泌開始時刻が遅れやすくなり、以前より遅い時間まで眠くならないことがあります。
思春期の睡眠リズム|イメージ図
思春期前の子ども
比較的早い時間に眠くなりやすい
思春期の子ども
眠くなるタイミングが後ろへずれやすい
※体内時計の変化を概念的に示した図です。時刻・分泌量・睡眠時間を測定したグラフではありません。
この変化は単なる生活習慣の問題ではなく、思春期の身体的な成熟に伴ってみられる現象です。
ただし、体内時計が夜型になりやすいことと、十分な睡眠が必要ないことは別です。
思春期は身体の変化に加えて、生活環境も大きく変わる時期です。
例えば、次のような生活が重なることがあります。
夜に眠くなる時刻が遅れる一方、学校がある朝の起床時刻はほとんど変えられないため、睡眠不足が蓄積しやすくなります。
こうした状態が続くと、授業中の眠気や集中力の低下、朝の起きにくさなどにつながる場合があります。
思春期には、学習、進路、友人関係、家庭環境などの影響で、心身に負担がかかることもあります。
ストレスによって寝つきが悪くなったり、途中で目が覚めたりすることがあります。
また、気分の落ち込みや不安が続く場合にも睡眠に変化が現れることがあります。
思春期の眠気は、本人のやる気や意志の強さだけで判断できるものではありません。
思春期に眠気を感じやすい場合、最初に確認したいのが毎日の睡眠時間です。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、小学生・中学生・高校生に対して、次の睡眠時間を参考にするよう勧めています。
年齢別|1日に必要な睡眠時間の目安
小学生
9〜12時間
中学生・高校生
8〜10時間
出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」こども版
これらは心身の健康のための目安であり、すべての子どもに同じ睡眠時間が必要という意味ではありません。
中学生・高校生の推奨睡眠時間が8〜10時間であることを踏まえると、毎日7時間程度しか眠れていない場合は、睡眠不足になっている可能性があります。
例えば、朝6時30分に起きるお子様が夜23時30分に眠った場合、睡眠時間は7時間です。
23:30就寝 → 6:30起床
7時間
中高生の一般的な推奨時間より短い
22:30就寝 → 6:30起床
8時間
推奨時間の下限を確保できる例
これは計算例です。実際には寝つくまでの時間や途中で目が覚める時間もあるため、布団に入っている時間と睡眠時間は必ずしも一致しません。
平日に睡眠不足が続いていると、休日に長く寝て不足分を補おうとすることがあります。
一度長く眠っただけで異常と判断する必要はありませんが、毎週のように休日だけ極端に起床時刻が遅くなる場合、平日の睡眠不足が蓄積している可能性があります。
休日の朝寝坊が大きくなると、体内時計がさらに遅れ、日曜日の夜に眠れず、月曜日の朝に起きづらくなる悪循環につながる場合があります。
休日の寝だめだけに頼らない
平日に睡眠時間を確保できているかを優先して見直しましょう。休日も、平日と起床時刻が大きく離れすぎない生活を目指すことが大切です。
「思春期に眠くなるのは、成長ホルモンの分泌が増えるから?」と考える方もいるかもしれません。
思春期には成長ホルモンや性ホルモンの働きが変化し、身長が大きく伸びる時期があります。
しかし、成長ホルモンの分泌が増えること自体が、日中の眠気の直接的な原因だと確立されているわけではありません。
メラトニン
体内時計や睡眠・覚醒リズムに関わるホルモンです。
思春期には分泌開始時刻が遅れやすくなります。
成長ホルモン
骨や身体の成長、代謝などに関わるホルモンです。
24時間を通して波のように分泌され、睡眠との関連もあります。
どちらも成長期の身体に関係しますが、働きは同じではありません。
成長ホルモンは、脳の下垂体から分泌されます。
24時間を通して分泌量が増減する「パルス状分泌」が特徴で、睡眠中に大きな分泌がみられることがあります。
特に睡眠開始後の深いノンレム睡眠と、成長ホルモンの大きな分泌には時間的な関連があります。
ただし、成長ホルモンは起きている時間にも分泌されます。「22時〜2時だけ出る」「深く眠るほど比例して身長が高くなる」といった単純な仕組みではありません。
関連記事:成長ホルモンは夜10時〜2時に出る?睡眠との関係を詳しく解説 →
十分な睡眠は、成長期の子どもの心身の健康を支えるために重要です。
しかし、睡眠時間を増やした分だけ、最終身長が高くなるという関係は確立されていません。
身長には遺伝的な要因や栄養状態、ホルモン、思春期の進行、骨の成熟状態なども関係しています。
思春期に大きく身長が伸びることと、眠気が強くなることは、必ずしも同じ仕組みで起こるわけではありません。
「よく眠る=成長ホルモンが多い=身長が高くなる」とは判断しないことが大切です。
日中の眠気が気になる場合は、睡眠時間だけでなく、眠る時刻・起きる時刻・朝の光・日中の活動などを確認しましょう。
体内時計を整えるには、毎日の起床時刻を大きく変えすぎないことが役立ちます。
休日に起床時刻が大幅に遅くなると、次の登校日に朝起きることが難しくなる場合があります。
ただし、慢性的な睡眠不足がある場合、単に早起きを強制するだけでは睡眠時間がさらに短くなってしまいます。夜の予定と睡眠時間も合わせて見直しましょう。
朝の光は体内時計を調整するうえで重要な刺激です。
朝起きたらカーテンを開け、朝食を摂るなど、起床後に日中の活動へ切り替えやすい生活を意識しましょう。
夜遅くまで動画を見たり、SNSやゲームを続けたりすると、就寝する時刻が遅れやすくなります。
画面からの光や、動画・ゲームなどによる刺激も、寝つきに影響する場合があります。
就寝前はスマートフォンを手の届かない場所に置く、夜の使用終了時刻を家族で決めるなど、続けやすいルールを検討しましょう。
部活動や塾で帰宅が遅くなる場合は、就寝準備の時間も含めて、無理のない生活スケジュールを考える必要があります。
勉強時間を確保するために睡眠時間を長期間削り続けると、日中の集中力や体調に影響する場合があります。
睡眠を削るしかないほど予定が多い場合は、本人と相談しながら生活全体の優先順位を見直しましょう。
日中に適度に身体を動かすことは、健康的な睡眠習慣を支える要素の一つです。
ただし、就寝直前の激しい運動は寝つきに影響する場合もあるため、運動する時間帯を考慮しましょう。
また、強い疲労が続く場合には、部活動や習い事の負担が大きすぎないか確認することも大切です。
家庭で確認したい睡眠習慣
朝、ほぼ決まった時刻に起きている
中高生は8〜10時間を参考に睡眠を確保できている
朝に日光を浴びる習慣がある
寝る直前までスマホを使い続けていない
眠気で学校生活や日常生活に支障が出ていない
思春期には眠くなりやすい理由がありますが、すべての強い眠気を「成長期だから」と考えることはできません。
十分な睡眠時間を確保していても眠気が続く場合や、日中の活動に支障が出ている場合には、睡眠障害やほかの病気が関係している可能性もあります。
睡眠・覚醒相後退障害
眠くなる時刻と起きられる時刻が極端に遅れ、学校生活に支障が生じることがあります。単なる夜更かしとは限りません。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠中の呼吸に問題があり、いびきや無呼吸、日中の眠気などにつながる場合があります。
ナルコレプシーなどの過眠症
睡眠時間を確保していても、日中に強い眠気や居眠りが現れる場合があります。
このほかにも、貧血などの身体疾患、服用中の薬、気分の落ち込みなどが眠気や疲労感に関係することがあります。
朝起きられないことに、起立時のめまい・動悸・頭痛などが伴う場合には、起立性調節障害などの可能性も含めて評価されることがあります。
中学生・高校生の日中の強い眠気や、朝起きられない状態については、まずかかりつけの小児科などに相談できます。
症状に応じて、睡眠医療に対応する医療機関、耳鼻咽喉科、その他の専門診療科での評価が検討されます。
「成長期だから眠い」と決めつけない
十分眠っていても強い眠気が続く、学校生活に支障がある、いびき・無呼吸がある場合は、小児科などで相談してください。睡眠障害の診断と、将来身長の予測は別の目的です。
「毎日しっかり寝ているのに、ほかの子より背が低い」「思春期になって眠くなったのに、身長はあまり伸びていない」
こうした場合は、睡眠時間だけでなく、実際の身長の伸び方を確認することが大切です。
成長曲線は、年齢ごとの身長や体重の推移を示すグラフです。
学校の健康診断結果や母子健康手帳などに記録された身長を使い、現在の身長だけでなく、これまでどのように伸びてきたかを確認します。
日本小児内分泌学会では、低身長の目安の一つとして、同性・同年齢の基準で−2SD以下という考え方を示しています。
ただし、−2SDより高くても、成長曲線上の位置が継続して下がっている場合には、年間成長速度などを確認することが重要です。
年間成長速度は、おおむね1年間で何cm身長が伸びたかを示す指標です。
年間成長速度の計算例
1年前:150cm
現在:154cm
年間成長速度
4cm/年
ただし、年間4cmという数字だけで、正常か異常かを決めることはできません。
思春期の成長スパート前・最中・終了後では、同じ成長速度でも意味が異なります。
関連記事:去年7cm伸びたのに今年3cmしか伸びていない|成長速度の考え方 →
身長の伸び方には、思春期の進行状況や骨の成熟も関係しています。
骨年齢は、骨格がどの程度成熟しているかを示す指標で、一般的には手や手首のレントゲン画像などを参考に評価します。
同じ年齢でも、思春期や骨の成熟が進む時期には個人差があります。
そのため、眠気が強いことだけから、成長スパートが始まった・終わった、成長ホルモンが多い・少ない、と判断することはできません。
身長が−2SD以下、成長曲線が継続して下がっている、以前より身長の伸びが明らかに少なくなった場合などは、小児科・小児内分泌科などで医学的な評価を検討しましょう。
成長の遅れには、遺伝・体質だけでなく、ホルモンや慢性的な疾患などが関係する場合があります。
相談先は目的によって異なります
眠気が強い・朝起きられない
小児科や睡眠医療に対応する医療機関で相談する。
身長の伸びが明らかに遅い・病気が心配
小児科・小児内分泌科などで成長障害の評価を相談する。
病気の診断ではなく、将来身長の目安を知りたい
成長曲線・骨年齢などを参考にする身長予測を検討する。
「中学生になって急に眠そうになった」「これから身長はどのくらい伸びそう?」と感じる場合、眠気だけでは将来身長を判断できません。
お子様の成長を考える際には、現在の身長や過去の成長記録、骨年齢などを参考にする方法があります。
当院では、6歳(小学1年生)〜18歳のお子様を対象に、身長予測シミュレーションをご案内しています。
現在の身長、ご両親の身長、成長曲線、レントゲンによる骨の成熟状態などから、将来身長の目安を予測する検査です。
検査結果は予測値であり、最終身長を確定・保証するものではありません。また、日中の眠気や睡眠障害の原因を診断する検査ではありません。
身長予測シミュレーション
15,270円(税込)
対象
6歳(小学1年生)〜18歳
所要時間の目安
約30分
予約方法
完全予約制
実施院
西新宿本院・横浜駅前院
身長予測シミュレーションは自由診療です。病的な低身長の診断や、成長ホルモン治療の適応判定を目的とした専門検査とは異なります。
将来身長の目安を知りたい方へ
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思春期には体内時計が夜型にずれやすく、夜に寝つきにくくなる傾向があります。学校や部活動などで睡眠時間が不足すると、日中に眠くなることがあります。ただし、日常生活に支障が出るほどの眠気を「普通」と決めつけないことが大切です。
眠気だけで成長スパートの開始を判断することはできません。思春期の眠気には体内時計や睡眠不足などが関係します。身長の伸び方が気になる場合は成長曲線や年間成長速度を確認しましょう。
必要な睡眠時間には個人差があり、8時間では足りない場合もあります。また、寝つきや途中覚醒などで実際の睡眠時間が短くなっている可能性もあります。十分な睡眠を確保しても強い眠気が続く場合は、小児科などへ相談しましょう。
休日に長く眠る背景に平日の睡眠不足がある場合もあります。休日の起床時刻だけを調整するのではなく、平日の睡眠時間を確保できているか確認しましょう。休日の極端な朝寝坊が続く場合は生活リズムの見直しが必要です。
十分な睡眠は健康な成長に重要ですが、睡眠時間を増やした分だけ最終身長が高くなるとはいえません。成長曲線、年間成長速度、栄養状態、思春期の進行なども確認することが重要です。
思春期には、メラトニンの分泌時刻が遅くなり、体内時計が夜型にずれやすくなる傾向があります。
それに加えて学校・部活動・塾などで睡眠時間が不足すると、日中の強い眠気が生じやすくなります。
この記事の結論
思春期の眠気を成長ホルモンの影響だけで説明しないことが重要です。睡眠時間・体内時計・日中の生活への影響を確認しましょう。
また、身長の伸びが気になる場合は、眠気が強いかどうかだけで判断せず、これまでの身長記録や骨の成熟状態なども踏まえて考えることが大切です。
成長ホルモンの分泌時間について詳しく知りたい方へ
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昼寝と成長ホルモンの関係が気になる方へ
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SBCメディカルグループ 整形外科エリア統括
SBC整形外科クリニック 西新宿本院 院長
沼倉 裕堅 医師
東北大学医学部医学科卒業。内科・救急科・整形外科などでの診療経験を積み、現在はSBC整形外科クリニック西新宿本院の院長として一般整形外科や小児低身長に関する診療に携わっています。
日本整形外科学会、日本再生医療学会、日本四肢再建・創外固定学会に所属しています。
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