「子どもがストレスを感じると成長ホルモンが減る?」「学校や家庭でストレスが多いと、身長が伸びにくくなる?」と心配になることがあります。
結論|一時的なストレスだけで「成長ホルモンが減って身長が止まる」とは判断できません
ストレスを受けると、コルチゾールを含むさまざまなホルモンや自律神経の働きが変化します。ただし、日常的な一時的ストレスを感じるたびに成長ホルモンが不足し、最終身長が低くなるという単純な関係ではありません。
一方、重い心理社会的ストレスや不適切な養育環境が長く続く特殊なケースでは、成長速度が低下することがあります。
先に区別したい3つ
日常の一時的なストレス → それだけで低身長の原因とは判断できません
長期間・非常に強い心理社会的ストレス → 一部で成長障害が報告されていますが、一般的な学校ストレスとは区別します
病的な高コルチゾール・グルココルチコイド過剰 → クッシング症候群や長期高用量の全身性ステロイド治療などでは、成長抑制が起こることがあります
成長ホルモンは、脳下垂体から一定量が出続けるのではなく、分泌量が大きく変化するパルス状分泌をします。
年齢、思春期、睡眠、運動、栄養状態などさまざまな要因の影響を受けるため、「最近ストレスが多い」という情報だけから、成長ホルモンが不足しているかを判断することはできません。
ストレス反応についても、短時間で終わる急性ストレスと、長期間続く慢性的なストレスは同じではありません。
現在の考え方
・短時間のストレス反応は、環境へ適応するための生理的反応です
・一時的なストレスだけで将来の身長が低くなるとはいえません
・長期間の強いストレスでは、成長・思春期・代謝などに関係する内分泌系の調節が乱れる可能性があります
・実際の成長評価では、ストレスの有無より成長曲線・年間成長速度を重視します
また、成長ホルモンはパルス状に分泌されるため、通常の1回の採血値だけで「成長ホルモンが足りない」と診断することはできません。
コルチゾールは副腎皮質から分泌されるグルココルチコイドの一つで、血糖や血圧の維持、代謝、免疫・炎症反応、ストレスへの適応などに関わる重要なホルモンです。
そのため、コルチゾールそのものを「分泌されると成長に悪いホルモン」と考えるのは適切ではありません。
グルココルチコイドが長期間・過剰に作用すると、GH–IGF-1系への影響だけでなく、骨端線の軟骨細胞の増殖・成熟などにも直接作用し、骨の長さ方向の成長を抑えることがあります。
つまり、「コルチゾールが増える→成長ホルモンが止まる→身長が伸びない」という一つの経路だけで説明するのは不正確です。
学校や受験でストレスを感じていることと、病的な高コルチゾール状態は同じではありません。
日常の心理的ストレスから、クッシング症候群などの内分泌疾患を推測することはできません。
慢性的で非常に強いストレスや、幼少期の深刻な逆境が成長へ影響することは医学的に報告されています。
2021年の小児内分泌分野のレビューでは、短時間のストレス反応は通常、持続的な悪影響を残さない一方、慢性的なストレス状態では、成長・甲状腺機能・思春期・代謝などへ影響する可能性が整理されています。
ただし、慢性ストレス時の体の反応は一様ではなく、すべての子どもで「コルチゾールが高い状態が続く」とは限りません。ストレス系、自律神経系、睡眠、食事、心理状態など複数の要素が関係します。
成長へ影響しうる要素の例
・食欲や栄養状態の変化
・睡眠の乱れ
・心身の健康状態
・視床下部―下垂体系を含む内分泌系の調節変化
・生活環境や養育環境
医学文献には、psychosocial short stature(心理社会的低身長・心理社会的成長障害)と呼ばれる病態があります。
これは、重い心理社会的剥奪、不適切な養育環境、虐待・ネグレクトなどの深刻な環境と関連して成長障害がみられる特殊な状態です。
受験、習い事、友人関係などで日常的に感じるストレスを、そのまま心理社会的低身長と呼ぶものではありません。
心理社会的低身長は「除外診断」です
成長障害の原因となる栄養・内分泌・慢性疾患・遺伝性疾患などを評価したうえで考える病態です。家庭で「ストレスが原因だろう」と診断することはできません。
過去の報告では、問題となる環境から離れたり、養育環境が改善したりした後に成長速度が改善するケースが示されています。
子どもにストレスがあり、同時に身長の伸びも少ないと、二つを直接結びつけたくなることがあります。
しかし、身長の伸びが低下する原因には、遺伝・体質、栄養状態、成長ホルモンや甲状腺ホルモンに関わる病気、慢性疾患、思春期の時期、骨・染色体の病気などさまざまなものがあります。
日本小児内分泌学会も、低身長の要因としてホルモン、染色体・骨、臓器の病気、薬剤、栄養、睡眠、運動、心理状態など複数の要因を挙げています。
そのため、「ストレスを減らせば身長が伸びるはず」と考えて、必要な医学的評価を遅らせないことが重要です。
「どれくらいストレスがあるか」を数値化するより、まず身長と体重の経過を確認します。
−2SD以下は低身長の一つの目安ですが、−2SD以下=病気という意味ではありません。反対に、−2SDより上でも成長曲線の軌道が継続して下がる場合には、成長状態の確認が重要です。
年間の成長速度について詳しくは、「子どもの身長は1年で何cm伸びれば正常?小学生・中学生の成長速度と受診目安」をご覧ください。
病気の有無や成長障害の原因を調べたい場合
小児科・小児内分泌科などで医学的評価をご相談ください。ストレスの有無、成長ホルモンの単回採血値、コルチゾール値の一つだけで原因を診断することはできません。
「原因」ではなく「この先の身長」を知りたい場合
病気の診断とは別に、成長記録や骨年齢などから将来身長の目安を確認する方法があります。身長予測の方法を見る
日常生活で生じる一過性のストレス反応まで「身長に悪い」と恐れる必要はありません。
家庭で大切なのは、身長を伸ばすことだけを目的にストレスをなくそうとするのではなく、お子様の心身の健康を支えることです。
・睡眠不足が続いていないか確認する
・食欲や体重に変化がないか見る
・学校、友人、部活動などで困っていることがないか話を聞く
・身長を頻繁に指摘したり、兄弟・同級生と比較しすぎたりしない
・不安、気分の落ち込み、不眠、学校生活への支障などが続く場合は、小児科や必要に応じて心理・精神面の専門家へ相談する
食事・睡眠・運動など、身体発育を支える生活習慣全般については、「子どもの発育・成長に必要なことは?食事・睡眠・運動と身長の関係」をご覧ください。
ストレスの有無だけでは、今後の身長や残りの成長量を予測することはできません。
身長が伸びにくい原因・病気の有無を調べたい
小児科・小児内分泌科などでの医学的評価を優先してください。
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※身長予測シミュレーションは病的低身長の確定診断を目的とする検査ではありません。予測結果は将来の最終身長を保証するものではありません。
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一般的な日常ストレスがあることだけで、身長が伸びなくなるとは判断できません。身長の伸びが少ない場合は、ストレスの有無だけでなく、成長曲線・年間成長速度・体重などを確認します。
そのように単純にはいえません。コルチゾールは体に必要なホルモンです。一方、クッシング症候群や長期間・高用量のグルココルチコイド作用では、GH–IGF-1系や骨端線など複数の経路を介して成長が抑えられることがあります。
ストレスを減らせば必ず身長が伸びるとはいえません。重い心理社会的剥奪などが成長障害へ関係していた特殊なケースでは、環境改善後に成長速度が改善することがありますが、一般的な低身長・成長速度低下には多くの原因があります。
通常、単回のコルチゾール値だけから「心理的ストレスが身長に影響している」と判定することはできません。コルチゾールには日内変動があり、病的な過剰が疑われる場合は目的に応じた内分泌検査が必要です。
身長について繰り返し指摘されたり、兄弟・同級生と比較されたりすることが心理的負担になる場合はあります。身長だけを問題視するのではなく、お子様本人の気持ちや生活全体にも目を向けてください。
この記事の要点
1. 一時的な日常ストレスだけで低身長になるとは判断できない
2. コルチゾールは体に必要なホルモンであり、「悪いホルモン」ではない
3. 慢性的で強いストレスは成長へ影響する可能性があるが、反応は一様ではない
4. 心理社会的低身長は、一般的な学校ストレスとは異なる特殊な病態
5. 身長が気になるときは、ストレスの有無より成長曲線・年間成長速度・体重・思春期を確認する
お子様のストレスに気づき、心身を支えることは大切です。ただし、身長の伸びが少ない理由を「ストレスのせい」と決めつけず、成長記録に変化がある場合は必要に応じて医療機関へ相談しましょう。
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