「椅子で脚を組むと、脚の付け根が詰まる」「脚を組んだときだけ、お尻の奥や股関節の外側が痛む」と気になっていませんか。
脚を組む姿勢では、股関節だけでなく骨盤や腰の位置も変わります。また、太ももを反対側へ重ねる場合と、足首を反対側の膝へ乗せる場合では、股関節の角度も異なります。
先に結論
脚を組んだときの痛みは、「鼠径部」「股関節の外側」「お尻」のどこが痛むかで確認する原因が変わります。
鼠径部の奥が深く曲げた姿勢でも痛む場合は股関節内部、股関節外側を押して痛む・横向きでも痛む場合は大転子周囲、お尻から脚へ痛みやしびれが広がる場合は腰や神経の状態も確認します。
痛む場所に近いものを確認
※痛む場所や姿勢は原因を考える手掛かりですが、それだけで病名を自己判断することはできません。
「脚を組む」といっても、股関節の動きは一つではありません。
太ももを反対側へ重ねる場合と、足首を反対側の膝へ乗せる場合では、股関節の曲がる角度や回旋方向が異なります。
さらに骨盤が傾いたり腰が回ったりするため、「脚を組んだら痛い=股関節の中に原因がある」とは限りません。
股関節内部の状態などを確認します。
大転子周囲の臀筋腱などを確認します。
腰椎・神経・臀部周囲なども含めて確認します。
股関節内部に症状がある場合、鼠径部・脚の付け根の奥へ痛みを感じることがあります。
脚を組むときだけでなく、
などでも同じ場所へ痛みが出るかを確認します。
深く曲げると鼠径部が痛む場合
FAI症候群(大腿骨寛骨臼インピンジメント症候群)では、股関節周囲の骨の形態などを背景に、股関節を動かした際に鼠径部・股関節前方の痛みが生じることがあります。
「脚を組むと詰まる=FAI症候群」ではありません
FAI症候群は、症状・身体診察・画像所見を組み合わせて判断します。特徴的な骨形態が画像でみられても、症状がなければ骨の形だけでFAI症候群とは診断しません。
クリック・引っかかりもある場合
股関節唇など関節内部の病変が症状に関係する場合には、鼠径部痛に加えて、深く曲げた際の痛みや引っかかりなどを伴うことがあります。
一方、股関節前方の腱が動いた際にもクリック・弾く感覚が生じることがあります。
「コキッと鳴る=股関節唇損傷」ではありません。音だけではなく、痛み・引っかかり・可動域・症状が出る動作を合わせて評価します。
立ち上がり・歩き始めでも痛む場合
変形性股関節症では、初期に立ち上がりや歩き始めで脚の付け根に痛みが出ることがあります。
状態が進むと股関節の可動域が低下し、
といった生活上の支障につながる場合があります。
脚を組むと痛いという症状だけで変形性股関節症とは判断できません。痛みの経過、股関節の可動域、必要な画像所見などを合わせて評価します。
痛みの中心が鼠径部ではなく、身体の横側にある大腿骨の出っ張り付近であれば、大転子周囲の組織を確認します。
大転子部痛症候群(GTPS)では、大転子周囲にある中殿筋・小殿筋腱などが症状に関係します。
確認する手掛かりは、
脚を組んだときに外側が痛むという症状だけではGTPSとは判断できません。外側の圧痛、横向き寝、歩行・階段などでも同じ場所が痛むかを確認します。
痛みの中心がお尻側にある場合は、鼠径部痛とは別に考えます。
お尻の周囲には臀筋群・腱・坐骨神経などがあり、腰椎からの関連痛や神経症状でも、お尻に痛みを感じることがあります。
特に、
場合には、腰・神経についても確認します。
お尻が痛い=梨状筋症候群、ではありません
お尻の痛みでは、腰椎・股関節・仙腸関節周囲・臀部の筋や腱・神経など複数の原因があります。まず痛みの広がりや腰の動きとの関係も確認します。
深臀部症候群など
深臀部症候群は、椎間板以外の原因で、お尻の深い部分にある坐骨神経が刺激・絞扼される状態を指します。
お尻の深部痛、坐骨神経に沿う症状、座位での悪化などがみられる場合がありますが、診断にはほかの原因との鑑別が必要です。
「脚を組むとお尻の奥が痛い」だけで深臀部症候群とは判断しません。
右脚を上にしたときだけ痛む、左脚では平気など、左右差も診察の手掛かりになります。
毎回同じ姿勢で痛む場合は、病名が分からない段階でも相談できます
股関節の病気なのか、腰やお尻の問題なのかをご自身で判断してから受診する必要はありません。痛む場所と、脚を組む・歩く・しゃがむなど、どの動作で症状が出るかを確認します。
一度だけ軽く痛み、その後明らかに改善し、普段の歩行や股関節の動きに支障がない場合には、痛みを誘発する姿勢を避けながら経過をみられることがあります。
一方、次のような場合は整形外科で状態を確認することをご検討ください。
「脚を組んだときだけ」の痛みでも、繰り返していれば相談できます
SBC整形外科クリニック西新宿本院・横浜駅前院では、股関節・鼠径部・お尻周辺の痛みを一般整形外科の保険診療で診察しています。
「FAIなのか、股関節なのか、腰なのか分からない」という段階で病名を決める必要はありません。痛む位置、脚を組んだときの姿勢、歩行・しゃがみ込みとの関係、しびれ、可動域などを確認し、必要な検査・治療を検討します。
一時的な軽い痛みで改善傾向にある場合には、痛みを誘発する脚の組み方を避け、楽な座り方を選びます。
痛みを確認するために何度も脚を組まない
「どの角度なら痛むか」を調べるために、痛む姿勢を何度も繰り返したり、股関節を強く押し込んだりする必要はありません。
また、「股関節が硬いから」と自己判断して、痛みを我慢しながら開脚や強いストレッチを行う必要もありません。
ストレッチや運動療法が適する状態もありますが、股関節内部、大転子周囲の腱、腰由来の症状などでは対応が異なります。
まず痛みの中心が、鼠径部、股関節外側、お尻、腰のどこにあるかを確認します。
同じ「股関節が痛い」という訴えでも、痛む場所によって確認する原因は異なります。
股関節の曲げ伸ばし・回旋・可動域、圧痛などを症状に応じて確認します。
お尻から脚へ痛み・しびれが広がる場合には、腰の動き、脚の感覚・筋力などの神経所見も確認します。
変形性股関節症、股関節形成不全、FAI症候群に関連する骨形態などを確認する必要がある場合には、診察結果に応じてX線検査を検討します。
大転子周囲の腱など比較的表層の軟部組織を確認する必要がある場合には、超音波検査を検討することがあります。
股関節唇、臀筋腱、神経などについてさらに詳しい画像評価が必要と判断した場合には、MRIなどを検討します。
すべての股関節・お尻の痛みに最初からMRIが必要なわけではありません。必要な検査は症状と診察所見を踏まえて判断し、院内で対応できない精密検査が必要な場合には、対応可能な医療機関への紹介を検討します。
「脚を組むと痛いから股関節を柔らかくする」と一律に治療するわけではありません。
原因や症状の程度に応じて、痛みを誘発する姿勢・活動量の調整、薬物療法、必要に応じた運動療法などを検討します。
リハビリテーションの適応がある場合には、股関節だけでなく腰・骨盤・体幹・膝などを含め、実際に症状が出る座位や歩行、スポーツ動作を確認しながら進めます。
一方、すべての股関節・お尻の痛みにリハビリテーションが必要なわけではありません。
SBC整形外科クリニックのリハビリテーションについて見る →
FAI症候群では股関節を深く曲げた位置などで鼠径部痛が出ることがありますが、脚を組んだときの痛みだけでは診断できません。症状・身体診察・画像所見を合わせて評価します。
お尻の深部にある組織が症状へ関係する場合はありますが、腰椎、股関節、仙腸関節周囲、臀部の筋・腱などでもお尻は痛みます。「お尻が痛い=梨状筋症候群」とは判断できません。
股関節外側の痛みでは、大転子周囲の臀筋腱など関節外の組織が関係することがあります。ただし、股関節内部や腰由来の症状でも外側へ痛みを感じる場合があるため、位置だけでは判断できません。
あります。左右の可動域や痛みのある場所などによって、片側だけ症状が出る場合があります。どちらを上にしたとき、どこが痛むかは診察時の参考になります。
脚を組む習慣だけで特定の股関節疾患を発症すると一概にはいえません。ただし、毎回同じ姿勢で痛みが出る場合には、その姿勢を無理に続けず原因を確認することが大切です。
はい。脚を組むたび同じ場所が痛む、悪化している、しゃがみ込み・歩行にも症状が広がった、引っかかり・しびれ・可動域低下などがある場合は整形外科で相談できます。
「鼠径部だからFAI」「お尻だから梨状筋」と決めつけず、痛む位置と、どの姿勢・動作で症状が再現されるかを整理することが重要です。
SBC整形外科クリニック 西新宿本院
院長 沼倉 裕堅 医師
所属学会:日本整形外科学会、日本再生医療学会、日本四肢再建・創外固定学会
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本記事は一般的な医学情報の提供を目的としています。「脚を組むと股関節が痛い」「鼠径部・お尻が痛い」という症状だけで特定の疾患を診断することはできません。必要な検査・治療は年齢、痛む位置、症状の経過、診察所見などに応じて医師が判断します。