深くしゃがんだときだけ、股関節の前・脚の付け根が「詰まる」「挟まる」ように痛む。浅くしゃがむ程度なら平気なのに、深いスクワットになるといつも同じ場所が痛い。
若い方では「身体が硬いだけ」と考えがちですが、股関節を深く曲げたときに、股関節内部や前方の組織へ負荷がかかって痛みが出ている場合があります。
先に結論
深くしゃがむたびに股関節前方・鼠径部へ詰まり感や痛みが出る場合は、股関節内部を含めて原因を確認することが重要です。
若年成人ではFAI症候群、股関節唇の病変、股関節形成不全などが候補になりますが、「深く曲げると痛い」という症状だけで病名を判断することはできません。
10代は成人と同じ原因だけを考えないことが重要です
成長期の10代で、股関節・鼠径部・太もも・膝の痛みに加えて、足を引きずる、急に股関節を動かしにくくなった、体重をかけると強く痛むといった症状がある場合は、大腿骨頭すべり症など成長期特有の病気も確認する必要があります。
痛みを繰り返している方は、 整形外科を受診する目安を先に確認する →
「しゃがむと股関節が痛い」といっても、痛みの出方によって確認する原因は異なります。
深くしゃがんだときだけ鼠径部の奥が詰まる・痛い
FAI症候群や股関節唇など、股関節内部の病態を含めて確認します。
引っかかる・カクッとする・ロックする感じがある
股関節唇など関節内部の組織が症状に関係する場合があります。ただし、音や引っかかりだけで病名は判断できません。
ランニング量を増やしてから歩くときにも鼠径部が痛い
若いアスリートでは、大腿骨頚部の疲労骨折なども確認する必要があります。体重をかけるたびに痛む場合は、無理に運動を続けないことが重要です。
ダッシュ・キックなどの瞬間に急に痛くなった
筋肉・腱の損傷だけでなく、成長期から若年者では骨盤周囲の筋肉付着部に起こる剥離骨折なども確認します。
10代で足を引きずる・太ももや膝まで痛む
大腿骨頭すべり症など、成長期特有の股関節疾患も確認する必要があります。成人のスポーツ障害と同じ感覚で様子を見続けないことが大切です。
股関節は、骨盤側の寛骨臼と、大腿骨側の大腿骨頭で構成されています。
股関節内部に症状がある場合、身体の外側よりも鼠径部・脚の付け根の奥に痛みや詰まり感を感じることがあります。
一方、「股関節の前」と感じていても、原因が必ず関節内部にあるとは限りません。股関節前方には腸腰筋などの筋肉・腱もあります。
診察では「股関節が痛い」だけではなく、鼠径部の奥なのか、表面に近い場所なのか、最も痛い位置を具体的に確認します。
股関節周辺の病気を広く確認したい方は、 股関節の痛み・障害:部位別症状一覧 をご覧ください。
FAI症候群(大腿骨寛骨臼インピンジメント症候群)は、若年~中年の活動性が高い方でみられる股関節痛の原因の一つです。
大腿骨頭と大腿骨頚部の境目にみられるcam morphologyなど、大腿骨側・寛骨臼側の形態が症状に関係する場合があります。
「骨の形が違う=FAI症候群」ではありません。
FAI症候群は、股関節痛などの症状、身体診察で得られる所見、画像所見を組み合わせて判断します。cam morphologyなどの形態が画像で確認されても、症状がない方もいます。
症状としては、
などがみられることがあります。ただし、これらはFAI症候群だけに特有の症状ではありません。
若い方の股関節前方痛では、FAI症候群だけに絞らず、年齢・スポーツ歴・痛みの出方からほかの原因も確認します。
寛骨臼の縁には「関節唇」という軟骨性の組織があります。
股関節唇が症状に関係している場合、前方・鼠径部痛に加えて、股関節を動かしたときのクリック感や引っかかり感などがみられることがあります。FAI症候群や股関節形成不全と併存する場合もあります。
骨盤側の寛骨臼による大腿骨頭の覆いが十分でない股関節形成不全は、若い成人の股関節痛に関係することがあります。
FAI症候群とは股関節の形態や力のかかり方が異なるため、「若くて鼠径部が痛い=FAI症候群」と決めつけずに評価することが重要です。
臼蓋形成不全について詳しく見る
股関節前方には腸腰筋などの筋肉・腱があります。
スポーツや反復動作によって負担がかかると前方に痛みが出る場合があります。股関節を動かした際に前方で弾くような感覚がある場合にも、関節内部だけでなく筋肉・腱などを確認します。
サッカーなどでは、体幹・内転筋など股関節周辺の複数の組織や動作が鼠径部痛に関係することがあります。
深いしゃがみ込みより、ランニング・キック・起き上がりなどで鼠径部周辺が痛む方は、 鼠径部痛症候群について も参考にしてください。
ランニングなど体重がかかる運動を繰り返している若い方では、大腿骨頚部に疲労骨折が起こる場合があります。
特に、運動量を急に増やしたあとから鼠径部痛が出た、走るときだけでなく歩行でも痛む、痛む側をかばって歩くようになった場合などは注意が必要です。
疲労骨折は初期のレントゲンで明確に確認できない場合があります。
症状や経過から疑われる場合にはMRIなどの追加検査が検討されます。歩くだけでも強く痛む状態で、ランニングやジャンプを続けないでください。
成長期では、大腿骨頭と大腿骨頚部の間にある成長軟骨部分でずれが起こる大腿骨頭すべり症があります。
股関節・鼠径部だけでなく、太ももや膝の痛みとして現れることがあり、足を引きずる、股関節を内側へ回しにくいなどの変化を伴う場合があります。
10代で跛行がある、体重をかけると強く痛む、股関節が急に動かしにくくなった場合は、通常の筋肉痛として運動を続けず整形外科で確認してください。
股関節前方に痛みや詰まり感があると、「身体が硬いからもっと伸ばした方がよい」と考える方もいます。
しかし、痛みを我慢して深い屈曲を何度も繰り返し、無理に可動域を広げる必要はありません。
まずは、
一方、痛みがあるからといって全員が長期間運動を中止する必要があるわけでもありません。原因や症状に応じて、適切な運動量やリハビリテーションを判断します。
一度だけ軽い違和感があり、その後は痛みなく歩行や運動ができている場合には、必ずしもすぐ医療機関を受診する必要があるとは限りません。
一方、次のような場合は整形外科への相談を検討してください。
早めの医療評価が必要な症状
特に成長期の10代で跛行や荷重困難がある場合は、大腿骨頭すべり症なども鑑別になるため、成人のスポーツ障害と同じ感覚で様子を見続けないでください。
深くしゃがむたびに同じ場所が痛む方へ
SBC整形外科クリニック西新宿本院・横浜駅前院では、股関節・鼠径部の痛みを一般整形外科の保険診療でご相談いただけます。
繰り返す前方痛、可動域の低下、スポーツへの支障などがある場合は、痛む場所・股関節の動き・症状が出る動作などを確認し、必要な検査を医師が判断します。
西新宿本院|整形外科保険診療を予約する 横浜駅前院|整形外科保険診療を予約する※Web予約では「整形外科保険診療」をお選びください。必要な検査・治療は診察後に医師が判断します。院内で対応できない精密検査や専門的治療が必要な場合は、対応可能な医療機関への紹介を検討します。
「深くしゃがむと前が痛い」という一つの症状だけで、FAI症候群や股関節唇の病変と診断することはできません。
問診・身体診察・必要な画像検査を組み合わせて、症状に関係する場所を評価します。
股関節を曲げる・回旋するなどの動きや、左右の可動域などを確認します。
股関節を曲げて内側へ動かした際に前方痛が再現されるかを見る誘発テストなどが用いられる場合もありますが、一つのテストが陽性というだけでFAI症候群とは診断できません。
レントゲンでは、股関節の骨の形態や関節の状態、股関節形成不全、骨折などを確認する手がかりが得られます。
FAI症候群を疑う場合にも骨性形態の確認は重要ですが、画像上にcam morphologyなどがみられたという理由だけで、現在の痛みの原因とは判断しません。
股関節唇・関節軟骨などの関節内組織を詳しく確認する場合や、大腿骨頚部疲労骨折などが疑われる場合には、MRIなどの追加検査が検討されることがあります。
レントゲンやMRIで見つかった形態・変化が、そのまま現在の痛みの原因とは限りません。症状・身体診察と画像所見が一致しているかを合わせて判断します。院内で対応できない精密検査が必要な場合は、対応可能な医療機関への紹介を検討します。
若い方の股関節痛では、画像に骨の形態が見つかったという理由だけで治療方法を決めるものではありません。
FAI症候群などの場合も、症状や機能への影響に応じて、痛みを誘発する動作・運動量の調整や、股関節・体幹周囲の機能を改善する運動療法などの保存的治療が検討されます。
詰まり感を我慢しながら深い可動域を繰り返すことが、リハビリになるわけではありません。
保存的治療を行っても症状が続き、スポーツや日常生活への影響が大きい場合などには、股関節を専門とする医療機関で追加評価や手術を含めた治療が検討される場合があります。
FAI症候群は考える原因の一つですが、症状だけでは診断できません。股関節唇、股関節形成不全、腸腰筋などでも似た前方痛が出ることがあります。
股関節や足首の可動域によってしゃがみやすさは変わります。ただし、毎回同じ股関節前方に痛みが再現される場合は、柔軟性だけの問題と決めつけないことが大切です。
痛みが出る深さまで繰り返すことは避け、まず痛みの出ない範囲へ深さや負荷を調整してください。歩行でも痛む、症状が強くなる場合は運動を中止して受診を検討してください。
レントゲンでは股関節の骨の形態を確認できますが、画像だけでFAI症候群とは診断できません。症状・身体診察・画像所見を合わせて判断します。
FAI症候群が若い年代で問題になることはありますが、成長期には大腿骨頭すべり症やスポーツによる剥離骨折など、成人とは異なる疾患もあります。足を引きずる、体重をかけられない、股関節・太もも・膝の痛みが続く場合は自己判断せず整形外科で確認してください。
「若いから大丈夫」「身体が硬いだけ」と決めつけず、痛む場所・年齢・スポーツ歴・どの角度で痛むのかを確認することが大切です。繰り返す痛み、可動域の低下、歩行やスポーツへの支障がある場合は整形外科へご相談ください。
症状の中心が今回の記事と違う方はこちら
股関節の病気を広く確認したい方
→ 股関節の痛み・障害:部位別症状一覧
股関節形成不全について詳しく知りたい方
→ 臼蓋形成不全について
ランニング・キックで鼠径部が痛む方
→ 鼠径部痛症候群について
ダッシュ・キックなどの外傷後から骨盤・股関節周辺が痛む方
→ 骨盤骨折・若年者の剥離骨折について
参考情報
深くしゃがむと股関節前方に繰り返し痛みが出る方は、SBC整形外科クリニックの一般整形外科へご相談ください。