「首や肩がこったときは、親指を反らすと楽になる」「親指と僧帽筋は神経でつながっているから、親指を伸ばすと肩も緩む」――SNSで、このようなセルフケアが話題になっています。
実際に試して「肩が軽くなった」「首を動かしやすくなった」と感じた方もいるかもしれません。では、本当に親指と僧帽筋は同じ神経でつながっているのでしょうか。
整形外科医から先に結論
「親指と僧帽筋が同じ末梢神経で直接つながっているため、親指を反らすと僧帽筋が緩む」という説明は、解剖学的には正確ではありません。
親指の伸展に関わる代表的な筋肉と僧帽筋では、主に関係する末梢神経が異なります。
一方、親指だけでなく手首・前腕・肘・肩まで動くストレッチでは、上肢全体の筋活動や身体の感じ方が変化し、一時的に「楽になった」と感じる可能性までは否定できません。
つまり、「実際に楽になった人がいること」と「同じ神経でつながっているから効くこと」は別です。
この記事でわかること
SNSでは、首や肩がこっているときに、親指を伸ばしたり反らしたりしながら腕を動かすと「肩が軽くなる」とする方法が紹介されています。
その理由として見かけるのが、
親指と僧帽筋は神経でつながっている
↓
親指側を伸ばす
↓
僧帽筋の緊張も取れる
という説明です。
ただし、人体の解剖をそのまま確認すると、この説明には修正が必要です。
まず「親指を反らす」という動き自体が一定ではありません
親指を手の甲側へ動かす「伸展」、手のひらから離す「外転」、さらに手首や前腕・肘まで動かす方法など、SNS上で紹介される動作は一定ではありません。そのため「親指を反らす=特定の1つの筋肉だけが動く」と単純化することもできません。
身体の各部位は脳・脊髄を含む神経系によって広くつながっています。
しかし、SNSの説明からイメージしやすい「親指を動かす一本の末梢神経が、そのまま僧帽筋まで続いている」という構造ではありません。
親指を手の甲側へ伸ばす動きには、長母指伸筋・短母指伸筋などが関わります。
これらの代表的な母指伸筋は、橈骨神経から分かれた深枝、その先の後骨間神経によって主に支配されています。
一方、僧帽筋は首の後ろから肩・背中へ広がる大きな筋肉で、肩甲骨の動きや安定に関わります。
僧帽筋の運動には主に副神経(第11脳神経)が関わります。また、C3・C4などの頚神経も感覚・固有感覚などに関与します。
つまり
親指を反らす → 親指と僧帽筋を直接つなぐ同じ神経が伸びる → 僧帽筋が緩む
という説明は、解剖学的には正確ではありません。
「同じ神経でつながっている」という説明が正しくないからといって、ストレッチ後に「肩が楽になった」という体験まで否定する必要はありません。
SNSで紹介される動作では、親指だけでなく、
といった動きが同時に起きている場合があります。つまり「親指単独のストレッチ」ではなく、上肢全体の運動になっている可能性があります。
14名の健康な成人男性を対象とした小規模な筋電図研究では、指を伸ばした場合と力を抜いた場合で肩周囲の筋活動を比較し、指伸展時に棘下筋の筋活動が高くなったことが報告されています。
この研究から、手指の運動と肩周囲の筋活動が完全に独立しているわけではないことは示唆されます。
ただし「親指を反らすと肩こりが治る研究」ではありません
この研究は健康な成人を対象に、指伸展時の棘下筋・大菱形筋の筋活動を調べたものです。肩こり患者の治療効果や、僧帽筋が緩むかどうかを検証した研究ではありません。
身体を動かした直後は、関節の動きや筋肉の感覚が変化し、「軽くなった」「動かしやすい」と感じることがあります。
その体感自体を否定する必要はありませんが、それだけで「僧帽筋の緊張が解除された」「肩こりの原因が治った」と判断することはできません。
親指・手首・腕を痛みのない範囲で軽く動かすこと自体が、すべての方で問題になるわけではありません。
ただし、SNS動画を見て「強く伸ばすほど神経に効く」「しびれるところまで伸ばした方がよい」と考えるのは避けましょう。
セルフケアは「痛み・しびれが出ない範囲」で
「痛気持ちいいところまで」「しびれるところまで」ではなく、痛みやしびれを生じない範囲で軽く動かす程度にしてください。強い刺激を加える必要はありません。
肩こりでは、首すじから肩・背中にかけて張り、重さ、痛みなどを感じます。
僧帽筋は肩こりに関係する代表的な筋肉の一つですが、肩こり=僧帽筋だけの問題ではありません。
肩こりのように感じる症状には、
肩こりの原因・診断・治療について詳しく知りたい方は、肩こりの診療案内もご覧ください。
首痛や腕・手のしびれがある方は、首が痛い原因・病院へ行く目安も参考になります。
通常の肩こりとしてセルフケアを続けない症状
突然の激しい頭痛・後頭部痛、顔や片側の手足が動かしにくい、ろれつが回らない、胸の痛み・息苦しさ・冷や汗、高熱を伴う強い首の痛みなどがある場合は、通常の肩こりとして様子を見ず、救急受診を含め速やかな医療相談を検討してください。
腕・手のしびれ、筋力低下、首を動かしたときに腕まで症状が広がる場合などは、筋肉のこりだけでなく頚椎や神経の状態も確認します。
「ストレートネックだから肩こり」と考えている方は、ストレートネックと首・肩の症状の関係もご覧ください。
整形外科では、「僧帽筋が硬いか」だけでなく、いつからどこがつらいのか、首・肩をどの程度動かせるか、腕や手にしびれ・筋力低下がないかなどを確認します。
症状や診察所見に応じてX線などの画像検査を検討します。すべての肩こりで画像検査を行うわけではありません。
MRIなどさらに詳しい画像評価が必要と判断された場合には、対応可能な医療機関への紹介を検討することがあります。
診断に応じて、薬物療法、日常生活・作業環境の調整、運動療法やリハビリテーションなどを検討します。
「何科へ行けばよいか分からない」という方
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デスクワークをすると肩こりを繰り返す方
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SNSのストレッチだけで肩こりを繰り返している方へ
一時的に楽になっても何度も症状を繰り返す、腕・手のしびれや筋力低下、首・肩の動かしにくさがある場合は、整形外科で原因を確認できます。
SBC整形外科クリニックでは、西新宿本院・横浜駅前院で一般整形外科の保険診療を行っています。
受診できるクリニックを確認する「同じ末梢神経が親指から僧帽筋まで直接つながっている」という意味ではありません。親指を伸ばす代表的な筋肉は主に後骨間神経、僧帽筋の主な運動支配は副神経です。
そうと決めることはできません。親指だけでなく手首・前腕・肘・肩まで動いている場合は、上肢全体の筋活動や身体の感じ方が変化する可能性があります。ただし、「同じ神経でつながっているから僧帽筋が緩んだ」とまでは判断できません。
親指を反らすだけで肩こりを治療できるという効果は確立されていません。肩こりには姿勢、筋肉への負担、頚椎、神経、肩関節など複数の要因が関係する場合があります。
おすすめしません。しびれや電気が走るような感覚が出る場合は、無理にその姿勢を続けないでください。運動を中止しても症状が続く、普段から腕・手にしびれがある場合は整形外科でご相談ください。
僧帽筋は肩こりに関係する代表的な筋肉ですが、原因はそれだけではありません。頚椎や神経、肩関節などが関係している場合もあるため、繰り返す症状では原因を確認することが重要です。
SNSで話題の「親指を反らすと肩こりが楽になる」という方法について、親指を伸ばす代表的な筋肉と僧帽筋が同じ末梢神経で直接つながっているわけではありません。
セルフケアで一時的に楽になることがあっても、腕・手のしびれ、筋力低下、首や肩の動かしにくさを伴う場合や、何度も症状を繰り返す場合は「僧帽筋が硬いだけ」と自己判断しないことが大切です。
肩こりを何度も繰り返している方へ
首痛や腕・手のしびれを伴う方へ
スマホ首・ストレートネックが気になる方へ
受診先に迷っている方へ
SBC整形外科クリニック 西新宿本院
院長 沼倉 裕堅 医師
日本整形外科学会、日本再生医療学会、日本四肢再建・創外固定学会に所属。
沼倉 裕堅医師のプロフィールを見る →肩こり、首の痛み、腕・手のしびれなどを一般整形外科でご相談いただけます。症状や診察所見に応じて必要な検査・治療・リハビリテーションを検討します。
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横浜駅前院でも、肩・首の痛み、手足のしびれなどを一般整形外科でご相談いただけます。
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※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、SNS上の親指ストレッチによる肩こり改善を保証・推奨するものではありません。肩こり・首の痛みにはさまざまな原因があり、必要な検査・治療は症状や診察所見などによって異なります。セルフケアによって痛み・しびれなどが生じた場合は中止してください。診療時間・受付時間には臨時変更・休診が生じる場合があるため、受診前に公式ページまたは予約画面で最新情報をご確認ください。