「トゲトゲのマットに寝ると肩こりが楽になる」「腰が軽くなる」「使った日はよく眠れる」「自律神経が整うらしい」――SNSを中心に、シャクティマットなどの指圧マットが注目されています。
実際に「身体が温かく感じる」「数分すると気持ちよくなる」と感じる方もいますが、使用したときの体感と、医学的に確認された治療効果は分けて考える必要があります。
整形外科医から先に結論
シャクティマットを使用中に心拍・血圧・心拍変動や背中の循環に変化が起こることを示した研究はあります。
ただし、これは「肩こり・腰痛・不眠・自律神経の乱れを治療できる」と証明したものではありません。
また、健康な若年者が3週間使用した研究では、ストレスや睡眠などについて、マットを使わず同じ時間リラックスした群を上回る効果は確認されませんでした。
一方、シャクティマットとは別の類似する突起刺激パッドでは、慢性的な首痛・腰痛の痛みが軽減した小規模研究もあります。
整形外科を受診した方がいい?
「シャクティマットに効果があるか知りたい」だけ
→ それだけを理由に整形外科を受診する必要はありません。
首・肩・腰の痛みを繰り返す/手足がしびれる/力が入りにくい
→ セルフケアとは別に、運動器に症状の原因がないか確認できます。
この記事でわかること
シャクティマットは、表面に多数の突起が配置されたアキュプレッシャーマット(指圧マット)の一種です。
背中などを乗せることで、多数の突起が皮膚へ同時に機械的な圧刺激を加えます。
使用直後には「痛い」「チクチクする」と感じ、その後「温かい」「気持ちいい」と感じる方もいます。
「身体が温かい」「楽になった」と「病気が治った」は別です
使用時の体感そのものを否定する必要はありません。ただし、体感だけから血流障害が改善した、頚椎や腰椎の病気が治った、自律神経が正常化したとは判断できません。
2011年には、32人の健康な成人が実際のShakti-matに横になり、自律神経・循環・呼吸・唾液中コルチゾールなどの変化を調べた研究が報告されています。
使用時には、次のような反応が観察されました。
ここで重要なのは「何を調べた研究か」です
この研究は、健康な人がマットへ横になったその場で起こる生理反応を調べたものです。肩こり・腰痛・睡眠障害などが改善したかを評価した治療研究ではありません。
2024年に発表された研究では、指圧マットを使用した経験のない健康な若年者62人を無作為に2群へ分けました。
マット群32人はShaktiMatを使用し、対照群30人はマットを使わず、どちらも週3回・1回20〜30分・3週間、静かな環境で横になりました。
3週間後、主観的ストレス、ウェルビーイング、睡眠の質などには時間経過による変化がみられました。
しかし、シャクティマット群とマットなしで休んだ群との間に有意な差は確認されませんでした。
血圧、心拍、痛みの閾値・耐性についても、3週間前後で有意な改善は確認されていません。
「マットの効果」と「静かに休む時間の効果」を分ける必要があります
マットを使わなかった人にも主観的な改善がみられたため、この研究ではシャクティマット特有の上乗せ効果は確認できませんでした。
肩こりや腰痛については、シャクティマットそのものの研究と、似た構造の突起刺激パッドを使った研究を分ける必要があります。
2012年には、シャクティマットとは別の「mechanical needle stimulation pad」を使った2つの無作為化パイロット試験が報告されています。
対象は、慢性首痛40人と慢性腰痛42人です。
14日間使用した群では、待機群と比較して主観的な痛みが低下し、痛みが最も強い部位の圧痛閾値にも改善がみられました。
首痛群では首の機能障害に関する指標も改善しました。
一方、腰痛群ではOswestry Disability Indexによる機能障害の改善は確認されませんでした。
この研究をシャクティマットへそのまま当てはめることはできません
対象人数の少ないパイロット研究で、比較対象も「偽の突起マット」ではなく待機群でした。さらに、研究で使用された器具はシャクティマットそのものではありません。
マットを使用すると一時的に痛みが軽く感じられる方がいたとしても、痛みの原因そのものが改善したとは限りません。
肩こりを繰り返す方は、肩こりの原因・整形外科で確認するポイントも参考になります。
首から腕・手まで痛みやしびれが広がる場合は、首が痛い原因・病院へ行く目安もご覧ください。
「寝る前に使うと眠りやすい」「頭がスッキリする」といった体験談もあります。
しかし、前述した3週間の研究では睡眠の質やストレスは時間とともに改善したものの、シャクティマットを使わず同じ時間休んだ群との差は確認されませんでした。
現時点ではこう考えるのが妥当です
本人が心地よく感じるのであれば、寝る前のリラクゼーション方法の一つとして使用する選択肢はあります。しかし、不眠症・睡眠障害の治療として有効性が確立しているわけではありません。
十分な睡眠時間を確保しても眠れない、夜中に何度も目が覚める、日中の強い眠気や休養感の乏しさが続く場合は、マットだけで対処せず、かかりつけ医や睡眠を扱う医療機関へご相談ください。
2011年研究では、シャクティマット使用中に背中の循環が増えていることを示唆する所見が報告されています。
多数の突起による皮膚刺激に対し、局所的な循環反応が生じた可能性があります。
「血行がよくなる=身体の不調が治る」ではありません
短時間の使用中に局所的な循環変化がみられたことと、長期的な血流改善や肩こり・疲労・病気が改善することは別です。
2011年研究では、血圧の上昇、心拍数の低下、心拍変動の変化などが観察されました。
研究者は、交感神経と副交感神経の双方に関連する反応が起きているとしています。
したがって、「副交感神経だけが優位になる」「自律神経がリセットされる」「乱れた自律神経が正常化する」といった説明は、現在の研究結果を超えています。
痛みが強いほど効果が高いという医学的根拠はありません。
2011年研究では、マットへ横になった直後に痛みが強くなり、約30秒でピークとなったあと徐々に低下しました。
これは刺激へ慣れていく順応を示す結果ですが、「我慢するほど治療効果が高くなる」という意味ではありません。
このような状態まで我慢して使わないでください
Shakti Japanの公式FAQでは、抗凝固薬の使用・血液凝固異常、重い皮膚障害、感覚低下を伴うニューロパチー、心血管疾患、妊娠など複数の条件について、使用を控える、または医療専門家へ相談するよう案内しています。
メーカーの使用上の注意と医学的な絶対禁忌は同じではありません
ただし、出血しやすい方、皮膚感覚が低下している方、皮膚疾患がある方などでは、鋭い突起によるトラブルを認識しにくい・悪化させる可能性があります。治療中の病気がある場合や使用可否に迷う場合は、主治医へ確認してください。
シャクティマットやマッサージなどで一時的に首・肩・腰が楽になっても、症状の原因がなくなったとは限りません。
整形外科で確認するのは「シャクティマットが効くか」ではありません
骨・関節・筋肉・腱・靱帯・神経などに、痛み・しびれ・動かしにくさを繰り返す原因がないかを確認します。病名が分からない状態から受診できます。
「何日続いたら病院へ行くの?」と迷う方は、痛みで整形外科を受診する目安も参考になります。
どの診療科を受診すればよいか分からない場合は、「これって整形外科?」受診先に迷う症状をご覧ください。
通常の外来予約を待たず、速やかな医療相談を検討したい症状
手足に急に明らかな力が入りにくくなった、歩きにくさが急に出た、強い外傷後の痛み、発熱を伴う強い首・腰痛、腰痛とともに排尿・排便の異常や会陰部の感覚低下などがある場合は、セルフケアを続けず速やかな医療対応を検討してください。
整形外科では、痛む場所や症状の経過だけでなく、首・肩・腰・関節の動き、筋力、感覚、しびれなどを確認します。
症状や診察所見などから必要と判断した場合には、X線検査などを検討します。
MRI・CTなどさらに詳しい画像評価が必要と判断された場合には、対応可能な医療機関への紹介を検討します。
痛み・しびれ・動かしにくさを繰り返している方へ
セルフケアで一時的に楽になっても症状が戻る、手足のしびれや筋力低下がある場合は、現在の運動器の状態を整形外科で確認できます。
SBC整形外科クリニックは首都圏に8院あり、院によって診療時間・受診方法が異なります。
お近くのSBC整形外科クリニックを確認する使用中の心拍・血圧・心拍変動・背部循環などの変化を示した研究はあります。一方、健康な若年者が3週間使用した研究では、ストレスや睡眠などについて通常のリラクゼーションを上回る効果は確認されませんでした。特定の病気を治療できると断定できる段階ではありません。
類似する突起刺激パッドで慢性首痛が軽減した小規模研究はありますが、シャクティマットによる肩こり治療の有効性が確立しているわけではありません。肩こりを繰り返す場合は、頚椎・神経・肩関節なども確認します。
類似する突起刺激パッドで慢性腰痛の痛みが低下した小規模研究はあります。ただし、腰痛の機能障害指標は改善せず、比較対象も偽マットではなく待機群でした。腰痛治療として有効性が確立しているとは言えません。
心拍や心拍変動など自律神経系に関連する指標の変化はありますが、交感神経・副交感神経の双方に関連する反応が観察されています。「自律神経の乱れが正常化する」と証明されたわけではありません。
健康な若年者を対象とした3週間の研究では睡眠の質に変化がみられましたが、マットなしで同じように休んだ群との差は確認されませんでした。不眠症の治療として効果が確立しているわけではありません。
使用中に背中の循環増加を示唆する所見はあります。ただし、短時間の局所的な生理反応であり、長期的な血行改善や病気の治療効果を示した研究ではありません。
「痛みが強いほど効果が高い」という医学的根拠はありません。使用直後の痛みが時間とともに低下することは研究で確認されていますが、強い痛みや皮膚トラブルを我慢する必要はありません。
シャクティマットは、多数の突起によって皮膚へ機械的刺激を加える指圧マットです。
実際にシャクティマットを使用した研究はありますが、現時点では研究数・対象人数とも限られています。
「使うと気持ちいい・一時的に楽になる」という体感と、病気を治療する医学的な効果は分けて考えることが重要です。
肩・首・腰などの痛みで受診を迷っている方へ
マットやマッサージをしても肩こりを繰り返す方へ
首痛に腕・手のしびれを伴う方へ
症状が続いていて受診を検討している方へ
SBC整形外科クリニック 西新宿本院
院長 沼倉 裕堅 医師
首・肩・腰・関節の痛み、手足のしびれなどを一般整形外科でご相談いただけます。
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※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、シャクティマットまたは特定の指圧マットの購入・使用を推奨するものではありません。研究で使用された器具、対象者、刺激方法、使用期間、比較条件は研究ごとに異なります。研究結果を現在販売されているすべての指圧マットやすべての症状へそのまま当てはめることはできません。首・肩・腰の痛み、しびれ、筋力低下、動かしにくさなどが続く場合はセルフケアだけで対処せず、医療機関へご相談ください。診療時間・受付時間等には臨時変更が生じる場合があるため、受診前に公式ページまたは予約画面で最新情報をご確認ください。