「膝を伸ばしきると裏側が痛い」「普段はそれほど気にならないのに、脚をまっすぐにすると膝裏がつっぱる」と気になっていませんか。
膝の裏には、ハムストリングスや腓腹筋などの筋・腱、膝窩筋、関節包、半月板、血管・神経など複数の組織があります。そのため、「膝裏が痛い」「伸ばすと痛い」という情報だけでは原因は決まりません。
先に結論
腫れやしこりがなくても、「筋肉が硬いだけ」とは限りません。
運動後から症状が出た場合は筋・腱などの軟部組織、関節の内側・外側にも痛みや引っかかりがある場合は半月板など、歩き始め・階段・可動域低下もある場合は変形性膝関節症などを確認します。
また、ベーカー嚢腫は膝裏のふくらみが手掛かりになりますが、明らかなしこりに気付かない場合もあるため、「触れない=ベーカー嚢腫ではない」とは言い切れません。
※症状の組み合わせは原因を考える手掛かりです。痛みが出る位置まで何度も膝を伸ばして自己診断する必要はありません。
膝後方の痛みは原因の幅が広いため、「膝裏」という場所だけではなく、次の4点を整理すると診察の手掛かりになります。
「伸ばすと痛い」だけでは原因を分けられません
膝を伸ばすと後方の筋・腱や関節周囲の組織にかかる力の条件が変わります。しかし、伸展時痛だけで「筋肉」「半月板」「ベーカー嚢腫」など特定の原因を決めることはできません。
膝の後ろには、太ももの後面から続くハムストリングス、ふくらはぎの腓腹筋、膝窩筋などがあります。
膝後方の痛みでは、これらの筋・腱に圧痛がないか、運動量が増えていないか、どの動作で痛みが再現するかなどを確認します。
筋・腱などが関係している可能性を考える手掛かりには、
ただし、「つっぱる=筋肉が硬い」とは限りません。膝関節内部やベーカー嚢腫などでも、膝を伸ばしたときに後方の張りや痛みを感じることがあります。
半月板は、大腿骨と脛骨の間でクッションや膝の安定性に関わる組織です。
半月板損傷では、膝の曲げ伸ばしに伴う痛みや引っかかり、関節液の貯留、状態によっては急に膝が動かなくなるロッキングなどが起こることがあります。
病変の位置などによって後方に近い痛みを感じる場合もありますが、膝裏が痛いという症状だけで半月板損傷とは判断できません。
半月板など関節内部を確認する手掛かりには、
変形性膝関節症では、初期には立ち上がりや歩き始めに痛みが出ることがあり、進行すると階段昇降や歩行、膝の曲げ伸ばしがつらくなることがあります。
さらに状態が進むと、膝を十分に伸ばしにくくなることがあります。このような可動域の変化に伴い、膝後方の張りや痛みとして感じる場合もあります。
膝裏の痛みに加えて、
ベーカー嚢腫(膝窩嚢腫)は、膝裏にある滑液包が関節液によって拡張した状態です。
典型的には、膝裏のふくらみ・張り・圧迫感などが手掛かりになりますが、大きさや位置によって症状の出方は異なります。
膝を最後まで伸ばした際に張りや痛みを感じる場合もあります。
しこりが触れないことだけでは否定できません
本人が明らかなふくらみに気付かない場合もあります。一方で、「伸ばすと痛い」という症状だけでベーカー嚢腫と判断することもできません。
成人のベーカー嚢腫では、変形性膝関節症や半月板病変など、膝関節内の問題を伴っている場合があります。そのため、膝裏だけではなく膝関節全体を確認します。
膝裏の痛みが、必ず膝関節だけから起こるとは限りません。
太もも・ふくらはぎへ広く症状が続く、しびれを伴う場合などには、神経症状を含めて膝以外との関連も必要に応じて確認します。
運動量が増えたあとに軽く痛み、その後明らかに改善している場合には、まず痛みを強く誘発する運動量を調整して経過をみる方法があります。
一方で、「膝裏だから筋肉が硬い」と決めつけ、強く伸ばす必要はありません。
痛みを確認するために何度も伸ばさない
手で膝を強く押し込む、痛みが出る位置まで何度もストレッチする、強く揉んで反応を確認するといった方法で症状を再現する必要はありません。
ストレッチや運動療法が役立つ状態もありますが、筋・腱、半月板、変形性膝関節症などでは適切な方法が異なります。症状を繰り返す場合は、原因を確認してから運動内容を決めます。
一度だけ軽く痛み、その後明らかに改善し、普段どおり歩いたり膝を曲げ伸ばししたりできている場合は、負荷を調整しながら経過をみられることがあります。
一方、次のような場合は整形外科で状態を確認することをご検討ください。
今回のように腫れがなく、膝を伸ばしたときだけ痛む状態とは分けて考えます。
速やかな医療評価を考えたい症状
ベーカー嚢腫の破裂と深部静脈血栓症(DVT)などで似た症状が出ることがあります。特に呼吸症状を伴う場合は、通常の整形外科外来予約を待たず救急対応を優先してください。
しこりがなくても、繰り返す膝裏の痛みは相談できます
SBC整形外科クリニック西新宿本院・横浜駅前院では、膝裏を含む膝の痛みを一般整形外科の保険診療で診察しています。
「筋肉なのか、半月板なのか、関節なのか分からない」という段階で病名を決める必要はありません。痛む場所、曲げ伸ばしによる変化、可動域、腫れ、運動歴などを確認し、診察結果に応じて必要な検査・治療を検討します。
西新宿本院の整形外科保険診療を予約する 横浜駅前院の整形外科保険診療を予約する診察では「膝の裏が痛い」という場所だけでなく、どの組織から症状が出ている可能性があるかを膝全体から確認します。
膝裏の中央なのか、内側寄り・外側寄りなのか、太ももやふくらはぎへ続いているのかを確認します。
伸ばしたときだけか、曲げた場合や歩行・階段・スポーツでも痛むか、運動量が増えた時期と一致するかなども重要です。
ハムストリングスや腓腹筋などの筋・腱に圧痛がないか、膝関節の内側・外側に圧痛がないか、最後まで曲げ伸ばしできるか、引っかかりがないかなどを症状に応じて確認します。
変形性膝関節症など、骨や関節の状態を確認する必要がある場合には、診察結果に応じてX線検査を検討します。
筋・腱、半月板、ベーカー嚢腫など、膝裏痛の原因すべてが通常のX線で分かるわけではありません。症状・診察所見と合わせて評価します。
膝裏の液体を含む病変、関節液の貯留、比較的表層にある筋・腱などを確認する必要がある場合には、超音波(エコー)検査を検討することがあります。
なお、膝の筋骨格系を確認するエコーと、DVTが疑われる際に静脈血栓を評価する超音波検査は目的が異なります。
半月板など膝関節内部についてさらに詳しい画像評価が必要と医師が判断した場合には、MRIなどが検討されます。
SBC整形外科クリニック西新宿本院・横浜駅前院には院内MRI・CTはありません。より詳しい画像検査や専門的な血管評価が必要と判断した場合は、対応可能な医療機関への紹介を検討します。
「膝裏が痛いからハムストリングスを伸ばす」というように、痛む場所だけで治療内容を決めるわけではありません。
原因や症状の程度に応じて、活動量の調整、薬物療法などを検討します。
リハビリテーションの適応がある場合には、膝の可動域や筋力に加えて、股関節・足関節、歩行やスポーツ動作なども必要に応じて確認しながら進めます。
一方で、すべての膝裏痛にリハビリテーションが必要なわけではありません。まず原因と現在の状態を確認します。
筋・腱などが関係している場合はありますが、それだけとは限りません。半月板、変形性膝関節症、ベーカー嚢腫などでも曲げ伸ばし時に膝裏の痛みや張りを感じることがあります。
いいえ。膝裏のふくらみは重要な手掛かりですが、本人が明らかなしこりに気付かない場合もあります。一方、「伸ばすと痛い」という症状だけでベーカー嚢腫と判断することもできません。
損傷する位置や状態によって後方に近い痛みを感じる場合はあります。ただし、膝裏痛だけでは半月板損傷とは判断できません。関節の内側・外側の痛み、引っかかり、腫れ、可動域などを合わせて評価します。
ストレッチが適している状態はありますが、原因によって対応は異なります。「筋肉が硬いだけ」と自己判断して、痛みを我慢しながら強く伸ばすことは避けてください。
歩けることだけでは原因や受診の必要性は判断できません。痛みを繰り返す、悪化する、以前より膝を伸ばしにくい、引っかかる、日常生活に支障がある場合などは整形外科への相談をご検討ください。
ベーカー嚢腫の破裂でも膝裏からふくらはぎへ痛み・腫れが広がることがありますが、DVTでも似た症状がみられます。急な片脚の腫れ・強い痛み・熱感などがある場合は自己判断せず速やかな医療評価を受けてください。突然の息苦しさや胸痛を伴う場合は救急対応を優先します。
「筋肉が硬いだけ」「しこりがないから嚢腫ではない」と決めつけず、痛む場所・動作・経過を合わせて原因を考えることが重要です。
SBC整形外科クリニック 西新宿本院
院長 沼倉 裕堅 医師
所属学会:日本整形外科学会、日本再生医療学会、日本四肢再建・創外固定学会
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本記事は一般的な医学情報の提供を目的としています。「膝の裏が伸ばすと痛い」という症状だけで特定の疾患を診断することはできません。必要な検査・治療は症状、経過、診察所見などに応じて医師が判断します。