「車に乗るため脚を持ち上げると、脚の付け根が詰まる」「車から降りるときに股関節の奥がズキッと痛む」と気になっていませんか。
車の乗り降りでは、脚を持ち上げる・股関節を曲げる・身体や脚の向きを変える動作が続きます。そのため、普通に歩くときは気にならない症状が、股関節を大きく曲げたり、曲げた状態で向きを変えたりしたときに目立つことがあります。
先に結論
脚の付け根の奥が、股関節を深く曲げたときに繰り返し痛む場合は、股関節内部を含めて原因を確認します。
FAI症候群や股関節唇などが候補になることはありますが、「詰まる」「引っかかる」という感覚だけでは病名は決まりません。立ち上がり・歩き始めでも痛む場合は変形性股関節症など、脚を持ち上げる動作で前側が痛む場合は筋・腱なども確認します。
症状に近いものから確認
※痛み方や「詰まり感」は原因を考える手掛かりですが、それだけで特定の疾患を診断することはできません。
股関節は、骨盤側の寛骨臼と大腿骨側の大腿骨頭からなる関節で、鼠径部・脚の付け根の奥に位置します。
そのため股関節内部に症状がある場合、身体の横側ではなく、鼠径部や脚の付け根の奥へ痛みを感じることがあります。
股関節内部の状態などを確認します。
腸腰筋など筋・腱を含めて確認します。
大転子周囲の腱など、股関節外側の組織についても確認します。
脚の付け根が痛い=必ず股関節の中、ではありません
鼠径部周辺には筋・腱などもあります。鼠径部の膨らみ、腹部症状、泌尿器・婦人科系の症状などを伴う場合には、整形外科以外の原因について確認が必要になることもあります。
車の乗り降りに必要な股関節の動きは、車高・座席の高さ・体格・乗り降りの方法によって異なります。
一般的には、
といった動作が組み合わさります。
そのため、股関節を深く曲げる動作や回旋で症状が出る状態では、平地歩行よりも車の乗り降りで痛みが目立つ場合があります。
FAI症候群(大腿骨寛骨臼インピンジメント症候群)は、股関節周囲の骨の形態などを背景に、股関節の動作に伴って症状が生じる状態です。
鼠径部・股関節前方の痛みが多く、深くしゃがむ、股関節を大きく曲げるスポーツ動作などで症状が出ることがあります。
「詰まる=FAI症候群」ではありません
FAI症候群は、症状、身体診察で確認される所見、画像所見を組み合わせて判断します。X線などで特徴的な骨形態がみられても、症状がなければ骨の形だけでFAI症候群とは診断しません。
確認する手掛かりには、
などがあります。
寛骨臼の縁には「股関節唇」という組織があります。
股関節唇など関節内部の病変が症状に関係している場合には、鼠径部・股関節前方の痛みに加えて、深く曲げた際の痛み、回旋時の引っかかりなどを伴うことがあります。
一方、クリック・弾く感覚は、
など複数の原因で生じることがあります。
「コキッと鳴る=股関節唇損傷」ではありません
音だけでは原因や重症度を判断できません。毎回同じ場所に痛みが出る、股関節の奥で引っかかる、ロックする、動かせる範囲が狭くなった場合などは、関節内部も含めて評価します。
変形性股関節症では、初期に立ち上がりや歩き始めで脚の付け根に痛みを感じることがあります。
状態が進むと、股関節を動かせる範囲が狭くなり、
など日常生活へ影響する場合があります。
ただし、車の乗り降りで痛いという症状だけで変形性股関節症とは判断できません。痛みの経過、股関節の可動域、必要な画像所見などを合わせて評価します。
若年〜中年の股関節痛では、FAI症候群だけではなく、寛骨臼による大腿骨頭の覆いが少ない股関節形成不全など、股関節の形態が症状に関係している場合があります。
形成不全が画像上みられても、それだけで現在の痛みの原因とは限りません。鼠径部痛が繰り返す場合には、症状や身体所見と合わせて評価します。
股関節前方には、脚を持ち上げる動作に関わる腸腰筋などの筋・腱があります。
車へ脚を入れる、階段を上る、スポーツで繰り返し股関節を曲げるといった動作で前側が痛む場合には、股関節内部だけでなく筋・腱など関節外の組織についても確認します。
「脚を持ち上げると痛い=腸腰筋」とは判断できません。鼠径部の奥の関節痛と、前方の筋・腱による痛みは本人の感覚だけでは区別しにくいことがあります。
10代で股関節・鼠径部が痛む場合には、成人に多い原因だけではなく、成長期特有の疾患についても確認します。
特に、
といった場合には、大腿骨頭すべり症など成長期特有の疾患も確認する必要があります。
10代の強い股関節痛や跛行を「成長痛」「身体が硬いだけ」と決めつけて、痛みを我慢しながらストレッチやスポーツを続けないでください。
一度だけ軽く痛み、その後明らかに改善し、普段の歩行や股関節の動きに支障がない場合には、痛みを誘発する動きを避けながら経過をみられることがあります。
一方、次のような場合は整形外科で状態を確認することをご検討ください。
「詰まるだけ」「乗り降りだけ」の段階でも、繰り返していれば相談できます
SBC整形外科クリニック西新宿本院・横浜駅前院では、股関節・脚の付け根の痛みを一般整形外科の保険診療で診察しています。
「FAIなのか、関節唇なのか、筋肉なのか分からない」という段階で病名を決める必要はありません。痛む場所、曲げる・回す動作との関係、引っかかり、可動域などを確認し、診察結果に応じて必要な検査・治療を検討します。
一時的な軽い症状で改善傾向にある場合には、痛みを強く誘発する股関節の角度や活動量を調整します。
身体だけを残して脚を大きくひねると痛む場合には、安全にできる範囲で身体と脚の向きをそろえて乗り降りすることで、症状を誘発する動きを減らせる場合があります。
「詰まりを取ろう」と無理に深く曲げない
膝を胸へ強く引き寄せる、痛む方向へ股関節を何度も回す、深くしゃがんで症状を何度も再現するといったセルフテストは必要ありません。
ストレッチや運動療法が適する状態もありますが、FAI症候群、関節内病変、変形性股関節症、筋・腱などでは対応が異なります。
鼠径部の奥なのか、前方の表面に近い場所なのか、外側なのかなど、痛みの中心を確認します。
車の乗り降り以外にも、しゃがみ込み、靴下を履く動作、階段、歩行、スポーツなどで症状が出るかを確認します。
股関節を曲げる・伸ばす・回す動き、左右差、圧痛、どの方向で痛みが再現されるかなどを症状に応じて確認します。
特定の徒手検査が陽性というだけで、FAI症候群や股関節唇損傷を確定することはできません。症状・身体所見・必要な画像所見を組み合わせて評価します。
FAI症候群に関連する骨形態、股関節形成不全、変形性股関節症、骨折などを確認する必要がある場合には、診察結果に応じてX線検査を検討します。
股関節唇・関節軟骨など関節内部について詳しい評価が必要な場合には、MRIなどの追加画像検査を検討することがあります。
すべての股関節痛で最初からMRIを行うわけではありません。必要な検査は症状と診察所見から判断し、院内で対応できない検査が必要な場合には、対応可能な医療機関への紹介を検討します。
「股関節が詰まるから、とにかくストレッチをする」と一律に治療を決めるわけではありません。
原因や症状の程度に応じて、痛みを誘発する動作やスポーツ負荷の調整、薬物療法、リハビリテーションなどを検討します。
リハビリテーションの適応がある場合には、股関節だけではなく、体幹・膝なども含めた筋力や可動域、実際に困っている歩行・車の乗り降り・スポーツ動作などを確認しながら進めます。
一方、すべての股関節痛をリハビリテーションだけで治療するわけではありません。関節内病変や骨形態などによっては、さらに専門的な評価・治療が必要になる場合があります。
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FAI症候群では股関節を深く曲げたときに鼠径部痛が出ることがありますが、詰まり感だけでは診断できません。症状・身体診察・画像所見を組み合わせて評価します。
あります。平地歩行と、脚を持ち上げて股関節を大きく曲げたり向きを変えたりする乗降動作では、股関節の動きが異なります。しゃがみ込みや靴下を履く動作でも症状が出るか確認します。
股関節唇の病変ではクリックや引っかかりを伴う場合がありますが、腸腰筋腱など関節外の組織でも音は生じます。クリックと痛みだけでは股関節唇損傷とは診断できません。
変形性股関節症では鼠径部痛が生じることがありますが、脚の付け根の痛みだけでは判断できません。立ち上がり・歩き始めの痛み、可動域、X線所見などを合わせて評価します。
原因によって異なります。痛みがある状態で股関節を無理に深く曲げたり、痛む方向へ強くストレッチしたりする必要はありません。繰り返す場合は原因を確認してください。
はい。毎回同じ動作で痛む、以前より悪化している、しゃがみ込み・歩行にも症状が広がった、引っかかりや可動域低下がある場合などは整形外科で相談できます。
「詰まるからFAI」「脚の付け根が痛いから変形性股関節症」と決めつけず、痛む位置と、曲げる・回す・歩く動作との関係を整理することが重要です。
SBC整形外科クリニック 西新宿本院
院長 沼倉 裕堅 医師
所属学会:日本整形外科学会、日本再生医療学会、日本四肢再建・創外固定学会
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