「サッカーでボールを蹴る瞬間に鼠径部が痛い」「インサイドキックや強いシュートをすると脚の付け根が痛む」と気になっていませんか。
サッカーのキック動作では、内転筋などの筋・腱だけでなく、股関節、恥骨周辺、骨盤・体幹にも負荷がかかります。そのため、同じ“鼠径部痛”でも原因は一つとは限りません。
先に結論
キックするたびに鼠径部が痛む場合は、内転筋関連・腸腰筋関連・鼠径部関連・恥骨関連・股関節関連などを分けて確認します。
また、成長期で強く蹴った瞬間に急激な痛みが出た場合には、筋肉の問題だけでなく骨盤・股関節周囲の裂離骨折なども確認します。
痛みを確かめるために全力キックを繰り返さない
キックするたび同じ場所が痛む場合は、強いシュートやロングキックで何度も症状を再現する必要はありません。痛みを誘発する競技負荷を一度調整し、症状が続く場合は原因を確認します。
この記事で確認すること
※痛む位置やキック動作だけで特定の疾患を自己診断することはできません。
サッカー中の鼠径部痛では、痛みが出始めた経過が重要です。
成長期では、筋肉や腱だけでなく、筋肉が付着する骨盤・股関節周囲の成長軟骨部分に強い牽引力が加わることがあります。
強いキックやダッシュをきっかけに、骨盤周囲の裂離骨折が起こることがあります。
成長期は「肉離れだろう」と決めつけない
強いキックの瞬間に急激な痛みが出た、プレーを続けられない、歩くと強く痛む場合などは、筋肉だけでなく骨の損傷も含めて整形外科で確認します。
「鼠径部」といっても、太ももの内側寄り、股関節前方、恥骨周辺、股関節の奥など、痛む場所はさまざまです。
サッカー選手の鼠径部痛では「グロインペイン」「鼠径部痛症候群」と呼ばれることがあります。
しかし、鼠径部痛には複数の原因があり、スポーツ医学では診察所見に応じて、内転筋関連、腸腰筋関連、鼠径部関連、恥骨関連、股関節関連などに分けて評価します。
複数の原因が重なることもあります
「内転筋だけ」「股関節だけ」と一つに絞れないケースもあります。治療や競技復帰を考えるためにも、痛みの中心と症状が出る競技動作を確認します。
内転筋群は太ももを内側へ寄せる働きなどに関わり、キック、ダッシュ、切り返しなどで負荷がかかります。
診察では、
などを確認します。
内転筋かどうか確認するために、脚を強く閉じるセルフテストや全力キックを何度も行う必要はありません。
キックで脚を前方へ振り出した際に股関節前方が痛む場合には、腸腰筋など股関節前方の組織も確認します。
キック以外にも、
などを確認します。
「脚を振り上げると痛い=腸腰筋」とは診断できません。股関節内部の問題でも鼠径部・股関節前方に痛みが出ることがあります。
キックだけでなく、腹筋運動、起き上がり、咳・くしゃみなど腹圧が高まる動作でも鼠径部痛が強くなる場合には、鼠径部関連痛などを確認します。
鼠径部に新しく明らかな膨らみが出た、強い腹痛・吐き気を伴うなどの場合には、スポーツ障害だけとは限らないため、別の診療科を含めた医療評価が必要です。
骨盤前方の中央に近い恥骨周辺が痛む場合には、恥骨関連の鼠径部痛などを確認します。
内転筋関連などほかの鼠径部痛と併存する場合もあるため、恥骨付近が痛むという情報だけで原因を決めることはできません。
鼠径部の表面より「股関節の奥」が痛み、深く曲げる・回す動作でも症状が出る場合には、FAI症候群など股関節関連の原因も確認します。
たとえば、
などが手掛かりになります。
FAI症候群は鼠径部痛や動作痛だけでは診断できません。症状、身体診察で確認される所見、画像所見を組み合わせて評価します。
深くしゃがんだときの詰まりが中心なら
深い屈曲で出る股関節前方痛について見る →一時的な軽い違和感で、その後はキック・ランニング・方向転換で症状がなく、明らかに改善している場合には、競技負荷を調整しながら経過をみられることがあります。
一方、次のような場合は無理にプレーを続けず、整形外科で状態を確認することをご検討ください。
「内転筋なのか、股関節なのか分からない」段階でも相談できます
SBC整形外科クリニック西新宿本院・横浜駅前院では、サッカーなどスポーツ中に生じる鼠径部・股関節周辺の痛みについて一般整形外科の保険診療で相談できます。
痛む組織や病名をご自身で特定してから受診する必要はありません。痛む場所、キック・ダッシュ・切り返しとの関係、発症の経過、股関節の動きなどを確認し、必要な検査・治療を検討します。
原因を自分で特定するために、強いキックや筋力テストを繰り返す必要はありません。
「股関節が硬いから開脚すれば治る」とは限りません
鼠径部痛の原因は柔軟性だけではありません。内転筋、腸腰筋、恥骨周辺、股関節内部、成長期の骨の外傷などでも症状が出るため、痛みを我慢して強く伸ばす必要はありません。
鼠径部、太ももの内側、恥骨周辺、股関節前方など、最も痛む場所を確認します。
インサイドキック、インステップキック、ロングキック、ダッシュ、方向転換など、どの競技動作で症状が出るかに加えて、急に始まったのか、反復負荷で徐々に始まったのかも確認します。
股関節の可動域、鼠径部周辺の圧痛、筋力と痛みの関係などを必要に応じて確認します。成長期では、骨盤・股関節周囲の骨の損傷も鑑別します。
骨折・裂離骨折や股関節の骨形態などを確認する必要がある場合には、診察結果に応じてX線検査を検討します。
筋・腱などの評価が必要な場合には超音波検査、股関節内部や骨・軟部組織についてさらに詳しい評価が必要な場合にはMRIなどを検討することがあります。
すべての鼠径部痛で同じ検査を行うわけではありません。必要な検査は症状・診察所見に応じて判断し、院内で対応できない検査が必要な場合には対応可能な医療機関への紹介を検討します。
治療は「鼠径部をストレッチする」「内転筋を鍛える」と一律には決まりません。
状態に応じて、競技負荷の調整、薬物療法、運動療法・リハビリテーションなどを検討します。
リハビリテーションの適応がある場合には、股関節周囲だけでなく、体幹・骨盤・下肢の機能や、実際のランニング・方向転換・キック動作なども確認しながら進めます。
競技復帰についても、「安静時の痛みがなくなった」だけで全力キックへ戻すのではなく、原因や回復状況に応じて競技動作への復帰を検討します。
SBC整形外科クリニックのリハビリテーションについて見る →
「グロインペイン」はスポーツ選手の鼠径部痛を表す言葉として使われますが、原因は一つではありません。内転筋関連、腸腰筋関連、鼠径部関連、恥骨関連、股関節関連などを分けて評価します。
太ももの内側〜恥骨寄りの痛みは手掛かりになりますが、痛む場所だけでは診断できません。複数の原因が重なることもあるため、強く力を入れてセルフテストを繰り返す必要はありません。
筋損傷の可能性はありますが、成長期では骨盤・股関節周囲の裂離骨折なども確認する必要があります。強い痛みでプレーを続けられない、歩行がつらい場合などは整形外科で評価してください。
休むと軽くなっても、キックや練習再開のたびに再発する場合は原因を確認することをおすすめします。症状を繰り返しながら全力プレーを続ける必要はありません。
はい。キックのたびに同じ場所が痛む、症状が悪化している、ダッシュや切り返しにも広がった、競技パフォーマンスへ影響している場合などは整形外科で相談できます。
「グロインペインだからストレッチ」「内転筋の肉離れだろう」と決めつけず、発症の仕方・痛む位置・どの競技動作で再現するかを確認することが重要です。
SBCメディカルグループ 整形外科エリア統括
SBC整形外科クリニック 西新宿本院 院長
沼倉 裕堅 医師
所属学会:日本整形外科学会、日本再生医療学会、日本四肢再建・創外固定学会、日本小児内分泌学会、日本成長学会
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本記事は一般的な医学情報の提供を目的としています。「サッカーでボールを蹴ると鼠径部が痛い」という症状だけで特定の疾患を診断することはできません。必要な検査・治療、競技負荷や復帰時期は、年齢、痛む場所、発症の経過、診察所見などに応じて医師が判断します。