椅子からの立ち上がりや、階段を降りる時に膝に「ズキッ」とした痛みや違和感を覚えることはありませんか。一時的な疲れや年齢のせいだと自己判断して放置していると、徐々に症状が進行してしまう可能性があります。
このような日常的な動作で感じる膝の痛みは、「変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)」という病気の初期症状であるケースが多く見られます。初期段階であれば、サポーターの活用やリハビリ、適切な治療によって進行を抑えることが十分可能です。しかし、症状を放置して重症化してしまうと、最終的には歩行が困難になり、大きな手術が必要になるリスクも潜んでいます。
この記事では、膝の痛みの原因として考えられる変形性膝関節症の基礎知識から、グレードごとの進行度、手術を避けるための予防策、そして近年注目を集めている「再生医療」まで、整形外科診療を行う医師の視点から詳しく解説します。痛みの原因を正しく理解し、ご自身の膝の健康を守るための第一歩としてお役立てください。
この記事の要約
椅子から立ち上がる時や、階段を降りる時に感じる膝の痛みは、変形性膝関節症の代表的な初期症状(グレード1〜2相当)です。
この段階では、安静にしていれば痛みが治まることが多いため、「少し休めば大丈夫」と見過ごされがちです。しかし、膝の関節軟骨は一度すり減ってしまうと、自然に元の状態へ回復することはありません。初期の段階で痛みの原因を特定し、膝への負担を軽減する対策を講じることが、将来的な重症化を防ぐための最も有効な手段となります。
痛みを我慢して日常生活を続けていると、軟骨の摩耗が徐々に進行し、やがて平地を歩く時や、じっとしている時でさえ痛むようになります。少しでも膝に違和感を覚えたら、まずは整形外科でレントゲンやエコー検査などの適切な検査を受け、ご自身の膝の状態を正確に把握することをおすすめします。
変形性膝関節症とは、膝の関節を構成する軟骨がすり減り、関節内に炎症が起きたり、骨が変形したりすることで痛みが生じる病気です。整形外科を受診される患者様の中でも非常に多く見られる疾患の一つです。
膝関節には、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の表面を覆う「関節軟骨」と、クッションの役割を果たす「半月板」が存在します。これらが衝撃を吸収し、関節を滑らかに動かす働きをしています。しかし、加齢による組織の水分減少、長年の関節への負荷、肥満による体重の増加、運動不足による太ももの筋力(大腿四頭筋)の低下などが重なると、この軟骨が徐々に摩耗していきます。
軟骨がすり減って削りカスが関節内に散らばると、関節を包む膜(滑膜)がそれを異物と認識して炎症を起こします。これが初期の痛みの主な原因です。さらに進行すると、軟骨が完全に失われて骨同士が直接こすれ合うようになり、激しい痛みや関節の変形を引き起こします。
変形性膝関節症の進行具合は、一般的にレントゲン検査(X線検査)を用いた「KL分類(Kellgren-Lawrence分類)」によって評価されます。現在、立ち上がりや階段での痛みを感じている方は、グレード1〜2の初期段階にある可能性が高いと言えます。
| 進行度 | 状態と主な症状 |
|---|---|
| グレード0 (正常) |
軟骨のすり減りや骨の変形は見られません。 |
| グレード1 (疑い) |
わずかな骨のトゲ(骨棘)の形成が疑われます。関節の隙間はまだ保たれています。 立ち上がりなど、動作の開始時に軽い痛みを感じることがあります。 |
| グレード2 (初期) |
明確な骨棘が確認できますが、関節の隙間は正常か、わずかに狭くなっている程度です。 階段の昇降、特に降りる時に痛みを感じやすくなります。 |
| グレード3 (進行期) |
関節の隙間が明らかに狭くなり、複数の骨棘が見られます。軟骨の摩耗が進行しており、歩行時にも痛みを伴い、正座が困難になります。 |
| グレード4 (末期) |
関節の隙間が完全に消失し、骨と骨が直接ぶつかり合っている状態です。著しい骨の変形(O脚など)が見られ、安静時にも強い痛みがあり、歩行などの日常生活が著しく制限されます。 |
グレード4まで進行してしまうと、保存療法(手術以外の治療)では痛みのコントロールが難しくなり、人工関節置換術などの手術を検討せざるを得ないリスクが高まります。そのため、初期段階(グレード1〜2)での積極的なケアが重要です。
「これくらいの痛みなら病院に行くほどではない」と迷われる方も多いですが、以下のような症状が一つでも当てはまる場合は、早めに整形外科を受診する目安となります。
当てはまったら要注意!膝の危険サイン
⚠自己流のケアにはご注意ください
特に、膝の腫れや熱感がある場合は、関節内で強い炎症が起きているサインです。自己流のマッサージやストレッチを行うと、かえって炎症を悪化させてしまう恐れがあるため注意が必要です。また、痛みをかばって歩くことで、腰痛や反対側の足の痛みなど二次的な不調を引き起こすこともあります。早期に専門の医師による診断を受けることが、最も確実な対処法となります。
整形外科を受診すると、まずは問診で痛みの時期や状況を詳しく伺い、触診で膝の腫れや可動域を確認します。その後、レントゲン検査によって骨の変形や関節の隙間を評価し、必要に応じてエコー検査(超音波検査)で軟骨や靭帯、水分の貯留状態をより詳細に確認します。
変形性膝関節症と診断された場合、グレード4(末期)で歩行困難な状態を除き、基本的には手術をしない「保存療法」から治療を開始します。
◆ 生活指導・運動療法(リハビリ)
体重のコントロールや、膝を支える太ももの筋肉(大腿四頭筋)を鍛えるトレーニング、関節を柔らかくするストレッチなどを理学療法士の指導のもとで行います。
◆ 装具療法(サポーター・インソール)
膝の不安定感を軽減するサポーターや、O脚を補正して膝内側への負担を減らす靴の中敷き(足底板)を使用します。
◆ 薬物療法
痛みが強い場合は、内服薬(NSAIDsなど)や外用薬(湿布、塗り薬)を処方し、炎症を抑えます。
◆ 物理療法
電気治療や患部を温める治療機器を使用し、血流を改善して痛みを和らげます。
◆ 注射治療
関節の滑りを良くし、炎症を抑えるために、関節内に「ヒアルロン酸注射」を行うのが一般的です。
近年、変形性膝関節症の新しい治療の選択肢として「再生医療」が注目されています。代表的なものに「PRP(多血小板血漿)療法」があります。
PRP療法とは、患者様ご自身の血液を採取し、特殊な遠心分離機にかけて組織の修復を促す成分(成長因子)を豊富に含む血小板だけを濃縮し、再びご自身の膝関節に注射で戻す治療法です。
💡 PRP療法のメリット
整形外科での変形性膝関節症の診療において、初診料、レントゲンやエコーなどの画像検査、痛み止めの処方、ヒアルロン酸注射、物理療法などの一般的な治療は、すべて保険診療が適用されます。自己負担割合(1〜3割)に応じた費用で受けることができます。
しかし、前述した「再生医療(PRP療法など)」については、現在日本の公的医療保険制度の対象外となっているため、自費診療(自由診療)となります
| 保険診療 (ヒアルロン酸・リハビリ等) |
自費診療 (再生医療・PRP療法等) |
|---|---|
|
メリット: 決められた範囲内で標準的な治療を安価に受けられること。 |
メリット: 保険の枠組みにとらわれず、最新の治療の選択肢を得られること。自己治癒力を活かした根本的なアプローチが可能。 |
東京都新宿区にあるSBC整形外科クリニック(院長:沼倉裕堅 医師)では、整形外科診療を行う医師の視点から、患者様一人ひとりの膝の状態に合わせた最適な治療法をご提案しています。
当院では、一般的な保険診療を用いた検査(レントゲン、エコー検査)、内服薬・湿布の処方、ヒアルロン酸注射はもちろんのこと、より根本的な関節環境の改善を目指す自費診療としての「再生医療(PRP療法など)」にも対応しています。「階段を降りる時の痛みが気になる」といった初期症状の段階から、進行を予防するための専門的なアドバイスを行っております。
また、東京メトロ丸ノ内線「西新宿駅」より徒歩2分、JR「新宿駅」西口より徒歩7分とアクセスが良く、土日祝日を含めて全日診療を行っているため、平日お仕事でお忙しい方でも無理なく通院していただけます。
※ご来院の際は、マイナ保険証または資格確認書を必ずご持参ください。
サポーターは関節を保温し、グラつきを抑えて動作を安定させることで痛みを和らげる効果があります。そのため、立ち仕事が続く日や、たくさん歩く予定がある時など、あらかじめ膝に負担がかかると分かっている場面で使用すると効果的です。ただし、四六時中きつく締め付けすぎると血流が悪くなったり、筋力が落ちてしまう原因にもなるため、自宅で安静にしている時や就寝時は外すなど、メリハリをつけて使用しましょう。
膝が熱を持って腫れ上がっているような激しい痛みがある場合は、まずは安静にし、患部を冷やすことが優先されます。しかし、慢性的な痛み(グレード1〜2程度の動作時の痛み)の場合、動かさずにじっとしていると、膝を支える太ももの筋力(大腿四頭筋)が衰え、関節も硬くなってしまい、結果的に膝への負担が増加して症状が悪化しやすくなります。整形外科医の指導のもと、痛みの出ない範囲でのストレッチや、水中ウォーキングなど膝に負担のかかりにくい適度な運動を継続することが推奨されます。
一度すり減ってしまった関節軟骨が、自然に元通りに再生することはありません。その意味では「完全に元の状態に治る」とは言えません。しかし、治療の目的は「関節の変形をなくすこと」ではなく、「痛みをコントロールし、日常生活の質(QOL)を維持すること」にあります。初期段階で適切なリハビリや生活改善を行い、必要に応じて注射治療や再生医療などを活用すれば、痛みに悩まされることなく、これまで通りの生活を送り続けることは十分可能です。
| 【所在地】 | 〒160-0023 東京都新宿区西新宿7丁目-21-3 西新宿大京ビル7階 |
|---|---|
| 【電話番号】 | 0120-962-992 (電話受付時間 9:15~18:00) |
| 【最寄り駅】 | 西新宿駅より徒歩2分 新宿駅より徒歩7分 都庁前駅より徒歩7分 |
| 【診療日】 | 土日祝日も全日診療 |
沼倉 裕堅 院長
■ 経歴
| 2017年 | Mahidol University Faculty of Medicine Ramathibodi Hospital 整形外科 留学 |
|---|---|
| 2018年 | 東北大学医学部医学科 卒業 湘南藤沢徳洲会病院 救急科・内科・整形外科 スカイ整形外科クリニック |
| 2020年 | いわき市医療センター整形外科 |
| 2021年 | 竹田綜合病院 整形外科 |
| 2022年 | 山形市立病院済生館 整形外科 いしがみ整形外科クリニック 整形外科クリニック西新宿本院 |
| 2025年 | SBC整形外科クリニック 西新宿本院 |
■ 備考(所属学会)